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『永遠の0』 [戦争映画]

『永遠の0』
2013年公開 山崎貴監督
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特攻隊に志願し戦死した祖父・宮部久蔵の人物像を探り始めた主人公。かつての戦友たちは口を揃えて「海軍一の臆病者」と評価する。命を惜しみ、生還することにこだわり続けた久蔵はなぜ特攻隊に参加したのか。やがて驚愕の真実が明らかになる。


原作含め前評判の異常な盛り上がりで少し損をしている映画です。


「感動で涙が止まらん」というレビューや口コミに触れてしまうと、自分の中の感動スイッチが重くなります。いざヤマ場を迎えても、「ほら泣け泣け、それが貴様の仕事だ」と言われているようでむしろ冷めてしまいます。
っていうかこのねじくれた性格はどうにかしないと損だな。

さておき、気になった点
軍国主義一辺倒の戦時中に「いのちだいじに」ポリシーを貫いた宮部久蔵。彼の行動が引き起こしたエピソードやその影響については詳しく描かれているのですが、そのポリシーが一体どのように醸成されたかについては全く描かれていない点が物足りなく感じました。
枝葉の部分に登場する映画ならではのご都合主義には目をつぶるべきだと思います。ストーリーの全てに納得がいく形で説明を付けていったら何時間あっても映画が終わりません。しかし、物語の根幹に関わる久蔵の内面に光が当たらないままでは何だかモヤモヤしたままなのです。
特異なキャラクターを描くならそれ相応の肉付けがないと説得力に欠けます。
一介の下士官に過ぎない宮部久蔵がポリシーを貫けたのはなぜか? 「妻子想いだったから」なんてのは答えになりません。彼を圧迫し続けた上官にも部下にも家族はいたはずです。それなのになぜ久蔵だけが?
感動スイッチが上手に入らなかった理由はこれかもしれません(自分の性格の問題だけではなかった。良かった!)。


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★★★★☆
模型モチベ刺激指数は 4点(5点満点)

脚本には不満タラタラですが、細部の考証およびCG-VFXは素晴らしいの一言。
撮影にあたっては零戦の実物大模型を製作(撮影終了後は大分県宇佐市が買取り、博物館での展示に向け準備中)、CGデータは田宮模型の全面協力。さらに唯一現存する実機エンジンから排気音が収録されたということで、特に映画館で聴くと迫力があって非常にいい。
タミヤは早速1/72と148でタイアップしたキットを発売しています。宮部久蔵はもちろん、ストーリーで重要な役割を果たす2名の乗機のマーキングも用意されているとか。
CGの空母『赤城』も見どころ満載です。艦首付近のリアルな錆や、中央付近ほど(艦載機のタイヤがあたって)汚れている飛行甲板など、模型製作に活かせそうなアイデアをもらえました。なお艦橋のみ実物大セットを製作したとか。なるほど


こんなモデラーさんにオススメ
・零戦21型
・零戦52型
・空母『赤城』
・空母『タイコンデロガ』


全然関係ないですけど、ポスター画像の青がとてもきれい。S800はこんな色に仕上げたい…

『アフガン』 [戦争映画]

『アフガン』
(原題:『第9中隊』)
2005年公開 F.ボンダルチュク監督
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舞台は1988年のソ連。志願兵として入隊した若者たちは厳しい訓練を経て、アフガニスタンへの侵攻軍に加わる。砂漠と岩山しかない国で彼らが戦う敵は、不十分な補給、そして住民と見分けのつかない武装勢力。第9中隊は高地に陣地を築くが、敵勢力の総攻撃に晒されてしまう。


序盤の流れは、ソ連版『フルメタル・ジャケット』と言うべき内容。ごく普通の青年たちが訓練所に集められて丸刈りにされ、厳しい鬼軍曹にボコボコにしごかれます。「ソビエト空挺軍は?」「人民の羨望の的、理想であります!」「では貴様らは?」「訓練大隊、特に貴殿の恥であります!」というどっかで聞いたようなやりとりも。ところがこの鬼軍曹殿、本家のハートマン軍曹よりもだいぶ人間味があり、いい味出してます。いつもしごきまくっている新兵の特技を知って個人的な頼み事をしてみたり、いざ出征の時に自分が一緒に行けないと知ってメソメソ泣いてしまったり。
『フルメタル・ジャケット』では訓練を経て新兵がどんどん人間味を失い、兵器の一部に成り果てていくのに対して、本作では仲間(さらには鬼軍曹まで含めた)との絆が強調されます。さわやかな青春群像。

さてアフガン入りの後は悲惨なシーンが続く…かと思いきやそうでもない。不毛の大地でいつ来るとも知れない補給と敵襲を待ち続ける日々。それでも退屈しないのは、合間に挟まれる魅力的なエピソード(緊迫感を高めて画面に引き込むのがすごく上手い)と、時おりドーンと広がる雄大な山岳風景(ただただ美しい)のおかげ。

大規模な戦闘シーンは3回あります。ソ連補給部隊の車列への襲撃、その報復としての地元村落破壊、最後に中隊が守る高地を敵の大勢力が総攻撃。戦闘の様相がそれぞれ異なることもあり、いずれも見どころ満載。ロシア国防軍が協力しているそうで、実物兵器も多数出演しますが詳しくは後述。


戦争の理不尽さ・過酷さを描きながらも、それでもうまいことやっていく若者の逞しさ・友情の素晴らしさ。ただしハリウッド映画のような陽気な英雄主義だけではなく、戦闘がおこるたびに容赦なく仲間が死んでいく悲惨な現実。それらと対比するかのような、美しい山岳風景と落ち着いた音楽。全体的に、非常にバランスのとれている良作だと感じました。
この前日にバランスもクソもない駄作を見たせいで幾分補正がかかっている可能性は捨てきれませんが…。


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★★★★☆
模型モチベ刺激指数は 4点(5点満点)

陸・空ともに多数の兵器が登場。
訓練所でも戦場でも、最も目立っていたのは主力戦車T-72でした。さて活躍するかというと、主砲を発射する機会はなかったり、せっかくリアクティブアーマーを装備しているのに対戦車ロケットであっさり履帯を破壊されたりとちょっと微妙。まぁゲリラ戦じゃしょうがないよね。キットはタミヤ、DRAGONなどから多数リリースされています。
空で強烈な存在感を誇ったのは攻撃ヘリMi-24D(ハインドD)です。2つ直列で並んだ丸キャノピーがチャーミングな彼は、対地攻撃においてロケットランチャーとガトリングガンで悪魔的な攻撃力を発揮。スティンガーミサイルをぶち込んでくる不逞の輩も登場せず、ハインド無双状態でした。タミヤ(中身はイタレリ)の1/72でこれまで少なくとも2回は作っていますが、またやってみたいな…



こんなモデラーさんにオススメ
・T-72主力戦車
・BRDM-2(丸い機関砲塔が付いた4輪の偵察装甲車)
・BMP-2(台形の機関砲塔が付いた履帯式の歩兵戦闘車)
・BM-21(村落を焼き払う自走多連装ロケット砲)
・Mi-24D

ざっと目についただけでもこれだけあります。赤いモデラーの人にはきっと眼福な映画。

『アイアン・ウォーズ』 [戦争映画]

『アイアン・ウォーズ』
2012年公開 S.エイミス監督
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時は1943年。ナチスの猛攻により米軍はオーストラリアまで撤退していた(!)。逃げ出したピューマの捕獲(?)に駆り出された米陸軍兵士の5人は荒野で「ピューマおびき寄せ装置」を作動させる。次々に気絶する5人。目を覚ますと、そこはなんとなんと、5万年前の地球でした(!?)。

ナチスは滅びていなかった!という壮大なホラ吹きSF映画、『アイアン・スカイ』への「アンサー・ムービー」と謳うパッケージに惹かれてレンタルしました。5万年前に不時着したUFOが現代に発掘され、その超テクノロジーを利用したナチスが世界を制覇し銀河系までも侵略するらしいです。
序盤30分は退屈な荒野のピクニック…40分…50分過ぎ、ストーリーの核心と思われるUFOが登場しても進行はグダグダ。登場人物は5人のオッサンのみ。絶滅動物のCGは『ジュラシック・パーク』や『ジュマンジ』の時代を彷彿とさせる出来。目を休める美女が出てこない点でも『アイアン・スカイ』に負ける。
ナチスが猛攻を駆けてくるわけでもなく、5人のオッサンがしょうもないことで喧嘩ばかりする。そしていろいろあって、ヒゲ生やしたオッサンがクモ型の戦闘機械によって尻をガツンガツン掘られるという究極に誰得なシーンも。
本家(?)の『アイアン・スカイ』も隙だらけのストーリーでしたが、本作はちょっと半端ではない。盛り上がらず、何も解決しないまま、地球を離れてどこかへお出かけするナチスのハウニブー円盤。そして堂々と現れる「TO BE CONTINUED」の文字…やられた、正真正銘のダメ映画だった。それでもTSUTAYAでは面白そうに思ったんだ。一流のパッケージ詐欺。


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☆☆☆☆☆
模型モチベ刺激指数は 0点(5点満点)

史上初の0点。なんかもう、完全に時間を無駄にした。エアブラシのメンテでもしてた方がずっとずっと生産的だったなぁ。
続編が作られない方に1億ライヒスマルク賭けます。

『アイアン・スカイ』 [戦争映画]

『アイアン・スカイ』
2012年公開 T.ブオレンソラ監督
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米大統領選キャンペーンで送られた宇宙飛行士が遭遇したのは、第二次大戦後月面に脱出したナチスだった! ついに復讐の時が来た。地球にのさばる資本主義の犬どもに、国家社会主義の洗礼を授ける時が来たのだ! 月面総統率いるドイツ第四帝国が地球に総攻撃を開始する!


You Tube にて公開された予告編が反響を呼び、世界中から1億円のカンパを集めたそうです。
私も1年ほど前に予告編を見て、公開を楽しみにしていました…が。ストーリーはなんだか中途半端な出来上がり。「ナチス生存説」という伝統的な陰謀論。70年ぶりに地球に帰ってきたナチスの引き起こす、浦島太郎的なドタバタコメディ。未曾有の敵に対し混乱する国際社会と、その中心たるアメリカ政府への風刺。どれもすごく面白いテーマなんですが、詰め込み過ぎていずれも物足りない感じ。アメリカ人がことあるごとに下ネタを吐くのもお寒い(これはわざとかも?)。
もう途中からは、主人公格の美女(ユリア・ディーツェ)を観賞する映画となっていました。元モデルの彼女はとてもチャーミング。

フィンランド・ドイツ・オーストラリアが製作拠点とあって、ナチスネタを正面からは扱えていない印象も受けます。ヒトラーの肖像および映像は1回も登場しないし(代わりにチャップリンの『独裁者』)、ユダヤ人迫害にも触れず。第四帝国国歌としてナチス党歌『旗を高く掲げよ』ではなく19世紀の愛国歌『ラインの守り』が歌われる、などなど。
ヨーロッパ諸国で「ナチス賛美につながる描写を避ける」配慮は猛烈です。日本人が考える以上に。
某戦略シミュレーションゲームで第二次大戦時のドイツ元首が「パーペン副首相」となっていたのには笑いました。そりゃなかろう(同時に日本の元首も「山本五十六元帥」となっていた。なんじゃそりゃ)。模型関係では、ピットロード社の『1/700 重巡アドミラル・ヒッパー』キットで甲板上のハーケンクロイツのデカールを2分割されています(欧米向け輸出への配慮)。
しかしこの映画でそんな配慮をされちゃうと少し冷めてしまうなあ、というのが正直な感想。政治的にきわどいネタはしょうがないとしても、都市計画に夢中の総統とか、言うこと全然聞かない国防軍に総統がキレるとか、実話をもとにした小ネタがあったらニヤニヤできたんだがなぁ。



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★★★☆☆
模型モチベ刺激指数は 3点(5点満点)

月面ドイツ国防軍が開発したさまざまな兵器が大活躍!…という展開を期待していたのですがイマイチ。ツェッペリン型の宇宙飛行船(変な言葉だ)とそこから発信するハウニブー円盤。UFOの大親玉である『神々の黄昏』号(名前がワーグナー的でとてもよい)。それぞれCGでしっかり見せてくれましたが、ナチス成分がもっと欲しい! 月面から地球に巨弾を叩きこむ列車砲や、弾道弾をぶち上げるUボート、現代の主力戦車を踏みつぶすハイパーティガー戦車などなど、ナチスならではの進化を遂げた兵器が見たかったですね。時間がありゃスクラッチビルドで「ぼくのかんがえたさいきょうのドイツこくぼうぐん」を作ってみるのも楽しいかも。
ということで妄想を刺激された分だけ若干高評価。

『ファイブ・デイズ・ウォー』 [戦争映画]

『ファイブ・デイズ・ウォー』(原題:The Lost Battalion)
2001年放映 R.マルケイ監督
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時は1918年、独軍と連合軍が重苦しい塹壕戦を続ける前線での実話。米陸軍の文民将校、ホイットルシー少佐の大隊は敵陣を突破してアルゴンヌの森に陣地を築いた。左右に展開する米仏の側衛部隊とともに、独軍を圧迫するのだ…
ところが、よく見ると側衛部隊なんかどこにもいやしない。前後左右を独軍に包囲され孤立している。食糧弾薬医薬品すべて残りわずかで水すら手に入らない。斥候も伝令も襲撃される。砲兵の援護射撃が始まったと思ったら味方陣地も爆砕される。さあどうする!?


森の中での戦闘シーンは非常に迫力があります。敵味方の距離が近く、わずかな射撃の応酬があった後にすぐ入り乱れての白兵戦。ブンブンと動き回るカメラワークもあり、臨場感はなかなかのものです。

『The Lost Battalion 失われた大隊』はアメリカでは有名なエピソードのようです。孤立無援、絶対絶命の状況にも関わらず、降伏することなく戦い続けた米兵の勇気! そんな文脈で語られるとか。テレビ用に製作され90分と少し短いので仕方ない部分はありますが、正直ストーリーの面では物足りなさが否めません。
主人公率いる部隊はニューヨーク出身者の大隊ということで、さまざまな人種の兵からなる寄せ集め。それぞれが自分の出自を少しずつ語る程度でしたが、もっとキャラクターを掘り下げるような描写があれば面白かった。職業軍人ではないホイットルシー少佐がなぜここまで勇敢に戦い続けることができたのか、という点も気になる。正気を失ったり敵に屈したりした兵達の姿を描くことで、そうならなかった彼の部隊の偉大さがもっと際立ったはず。
文句ばかり言ってしまいましたが、珍しい第一次大戦ものということでかなり期待していた裏返しです。



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★☆☆☆☆
模型モチベ刺激指数は 1点(5点満点)

森林の中での白兵戦が9割以上を占める映画なので、あまり兵器は登場しません。
失われた大隊に誤爆でトドメをさす連合軍の野戦砲(一応味方だよ)と、死にかけの大隊を発見する偵察機くらいです。偵察機は仏軍の主力だったブレゲ14に似ている?が後退した主翼や太い翼間柱を見ると違うかも…。この時代はあまり詳しくないので研究が必要です。

こんなモデラーさんにおすすめ
・森林戦のジオラマ

防御陣地のレイアウトと、そこを兵がいかに守り攻めるか。軍服がどのように汚れ、兵はどんな怪我をするか。人物の接写が多いので相当細かく見ることができます。

『レニングラード 900日の大包囲戦』 [戦争映画]

『レニングラード 900日の大包囲戦』
2009年公開 A.ブラフスキー監督
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1941年9月以来、900日近くにわたりドイツ軍に包囲されたレニングラード。革命の父レーニンの名を冠した旧都が敵軍の手に落ちることは許されなかった。都市への補給は途絶え、連日の砲撃と空襲、そして絶望的な飢餓が市民を襲う。
主人公は取材に訪れたイギリス人記者。彼女とロシア人女性警官の交流がストーリーのメインです。


全体的に散漫な印象。エピソードがいろいろあり過ぎて、「これ何の映画だっけ?」となってしまいます。

ヒトラーやフォン・レープ元帥が登場するものの大局的な戦略を描いているわけではなく
市民や兵士にスポットが当たるもののそれぞれの人物が汲みとれるほど深く描かれるわけでもなく
地上・空中の戦闘シーンがあるもののお粗末なレプリカ兵器(後述)と平凡なカメラワークで残念な出来。

日々深刻さを増す飢餓の描写だけは充実しており、観ているとどんどんひもじくなってきます。
それから、意気投合して酔っぱらった女性2人の猥談は興味深いものがあります笑


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★☆☆☆☆
模型モチベ刺激指数は 1点(5点満点)

兵員輸送車を降りた義勇軍(という名の市民)が、銃も持たされずに戦場を駆け回るシーンから映画は始まります。陸戦のシーンはほぼこれのみ。
ロシア戦車を改造したと思われる、やたらと背の高いⅣ号戦車が登場します(砲塔のアンバランスさは『マイ・ウェイ』に出てきたやつとそっくり。まさか同じか?)。一瞬ちらりと見えるⅢ号突撃砲はまだましな出来。しかしディティールを参考にできるほどではありません。
ソヴィエト側の兵器は兵員輸送装甲車、輸送トラック、対空砲など登場しますが浅学にて詳細不明。
空の主役は市街地に猛烈な爆撃を加えるメッサーシュミット Bf109。爆装はできたのでしょうか?

考証上で評価すべきはむしろ兵器ではなく、戦場となった市街地のディティールでしょう。砲爆撃で荒れ果てた廃墟と、それでもそこで命をつなぐ市民の生活。街路に応急的に作られた陣地や砲座、対戦車障害物。想像で補うのは難しい部分ですが、見事に映像化してくれています。

こんなモデラーさんにオススメ
・市街戦ジオラマ


これは果たして戦争映画だったのか…大げさな邦題でタイトル負けした例です。

『マイウェイ 12000キロの真実』 [戦争映画]

『マイウェイ 12000キロの真実』
カン・ジェギュ監督 2011年公開
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ノルマンディー上陸作戦にて捕虜となったドイツ兵の中から、一人の東洋人が発見される。彼が語ったのは、日本軍・ソ連軍・ドイツ軍の兵士として12,000キロに及ぶ道のりを戦い続けてきたという驚くべき物語だった!


韓国の映画であることを全く知らずに見たので、前半かなり辛いものがありました(←カラいではない)。
植民地時代の朝鮮で、あるいは中国で、日本人がいかに極悪非道な存在だったか。朝鮮と中国の人々がいかに悔しい思いをしてきたか。というシーンが続き、真実だとしても日本人が見るのはちょっときついです。主人公(チャン・ドンゴン)のライバルとして登場する日本軍将校(オダギリジョー)も、本当に残忍なイヤな奴。
謝罪と賠償を求める反日映画だったのか…と微妙な気持ちに。

ところが中盤、戦争がいよいよ激化するあたりから雰囲気は一変します。というか、戦争の描写がすさまじく反日とか帝国主義とかどうでもよくなってしまう。ノモンハンでの戦車戦からシベリアでの捕虜生活、ロシア南部での市街戦、そしてノルマンディーへのフルコース。主人公2人は何度も捕虜になりながら壮絶な戦争を生き延びていきます。敵も味方も善も悪もなく、戦場では平等に死が訪れる(主人公以外は)。

ストーリーはテレビドラマ的な無理が随所に見られます。しかし映像の迫力と臨場感はなかなか。特に兵士の視線で走り、撃たれ、地面に倒れ込むようなカメラワークは圧巻でした。ロクヨンの『ゴールデンアイ』をさらにリアルにしたような感じです。何度かこの技法が使われ、ラストシーンでも主人公に自然に感情移入する手助けとなっているように思いました。


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★★☆☆☆
模型モチベ刺激指数は 2点(5点満点)

一番目立つ兵器はソ連軍の軽戦車、BT-7でしょう。中盤のノモンハン戦で、日本軍と壮絶な戦いを繰り広げます。日本軍の歩兵部隊はカミカゼ攻撃で戦車隊に立ち向かうわけですが、「沖縄戦ならいざ知らず、この時期に戦車地雷抱えて飛びこむだろうか」「貴重なトラックを自爆させるだろうか」などなど疑問は尽きず。まぁ映画と割り切るしかないでしょう。この肉弾攻撃シーンのおかげでBT-7の詳細なディテールを見ることができますし。
ロシアでの市街戦ではドイツ軍のⅢ号戦車らしき戦車が登場しますが、これは車高と砲塔がやたら高くなんだかハリボテのような残念な作り。
ノルマンディーでは艦砲射撃を行う連合軍の戦艦が一瞬写ります。3連装砲塔で、細身の前艦橋というヒントから調べるにこれはおそらく『サウスダコタ』級の『アラバマ』ではないかと…。調べてみて初めて知ったのですが、米海軍の新造戦艦はほとんどが太平洋で活動していたんですね。LCM(上陸用舟艇)や爆撃機B-24、戦闘機P-51も登場してノルマンディーはお腹いっぱいです。

こんなモデラーさんにオススメ
・ソビエト軽戦車BT-7

日ソ独の兵士フィギュアを改造してチャン・ドンゴンとオダギリジョーを再現するのも面白そうですね。誰か人形改造コンテストでやらないかな。

『聯合艦隊司令長官 山本五十六』 [戦争映画]

『聯合艦隊司令長官 山本五十六』
2011年公開 成島由監督
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年末公開の映画を見てきました。
日独伊三国同盟締結に強硬に反対し、「海軍の左派」と批判された海軍次官時代。連合艦隊司令長官に任命された後も対米開戦に反対しながら、開戦の方針に従い真珠湾奇襲作戦を計画・実行。ミッドウェイ作戦の敗北後、ニューギニアで乗機を撃墜され戦死。…という山本五十六の半生を描きます。

「海軍は徹底的に防戦的であるべし」という信念と、日米の圧倒的国力差への理解から、対米開戦には終始否定的だった山本の姿勢が印象的です。また、それを糾弾し開戦へと突き進もうとするマスコミや一般大衆への痛烈な批判も。しかしながら夏のテレビドラマでありがちな「庶民視線・お涙頂戴史観」から見事に脱却しており、ただの反戦映画にはなっていません。

時代考証もかなりきちんとなされており、史実に基づく(と思われる)山本の小さなエピソードもちりばめられています。
「勝てない戦争をなぜ日本は始めたのか?」という大きなテーマに対して、当時の日本が感じていた閉塞感と、「戦争で何かが変わるかも」という期待感を示しています。今を生きる我々は忘れがちですが、昭和16年当時、日本人は敗戦というものを実体験として知らなかったわけですね。


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★★★★☆
模型モチベ刺激指数は 4点(5点満点)

何といっても、CGを駆使して描写された真珠湾攻撃とミッドウェイ海戦が見どころです。延べ時間は短いですが、ディテールよりもアングルの面で斬新さを感じました。
たとえば空中戦。機首に固定されたガンカメラからの(と思われる)視線は、その不安定さがゆえにリアルです。You Tube などで見る記録映像と同じ、今までの戦争映画では見られなかった臨場感。
さらに、艦隊が上げるもうもうたる黒煙の表現は、プラモでは見せられない「生きた軍艦」のイメージ。上空から見ればそれぞれの艦影よりも、海原に広がる黒煙が艦隊の存在感を示していたのだろうか、と感じます。

こんなモデラーさんにオススメ
・やはり南雲機動艦隊
・やはり連合艦隊旗艦『長門』
・開戦後の『大和』も旗艦として
・棺としての一式陸攻

どうしても『トラ・トラ・トラ!』とかぶってしまいますね…

そういえば、上記記事でも紹介した艦船模型スペシャルNo.42『ハワイ作戦のすべて 南雲機動部隊』を購入しました。
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各雑誌をくらべると

・艦船模型スペシャル
キット改造やディテールアップに関しての記述が充実して読み応えがある。新製品や準新製品へのフォローが速い。企画記事が詳細で勉強になる。購入済のキットに対応する巻を買うのがいいかも。

・NAVY YARD
超絶ディテールや作業工程の写真が多く見応えがある。どの作例もかっこいい。企画記事はそこそこだが、マニアックな連載が意外に面白い。とりあえずパラパラ眺めていると模型欲がムラムラ湧いてきます。

ただ、どちらも必ず数ヶ所は誤植があり、ちゃんと校正しとるんかいな!と毎回思ってしまいます。

『トラ・トラ・トラ!』 [戦争映画]

『トラ・トラ・トラ!』
1970年公開 リチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二監督
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日米スタッフが共同して真珠湾攻撃を描いた大作です。
山本五十六中将が連合艦隊司令長官に就任するシーンから始まり、日米双方の戦争準備が克明に描かれます。特に、アメリカ側にもハワイへの奇襲を予測し警戒していた人物がいたことを示しているのが特徴的です。開戦に至るまでの外交上のやりとりを詳細に描き、真珠湾攻撃を単なる「卑怯な奇襲」としていないところは40年前の作品ながら公正と言えましょう。日本軍の襲来を警告していながら、黒煙に包まれる真珠湾を呆然と見つめる太平洋艦隊司令長官キンメルの姿には心打たれます。

軍用機の多くは実機が使用され、艦船の実物大セットも見ごたえ十分です(後述)。

黎明の発艦、峡谷から真珠湾を目指す編隊、被弾し格納庫に突入する機体など、戦時中の日本映画『ハワイ・マレー沖海戦』に影響されたと思われるシーンもあります。こちらも合わせて見ると面白いかと。


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★★★★★
模型モチベ刺激指数は 5点(5点満点)

この映画の見どころはなんといっても実機による空中戦。
とはいえ飛行可能な九九艦爆や九七艦攻は現存しないので、米国製の練習機を改造して日本軍機に似せた機体を使用しています。間違い探しをしてみるのもいいかもしれません(零戦の主翼前辺がわずかに後退している、九九艦爆の主翼が楕円形でない、尾翼の後端が丸い…など)。

荒れる冬の北太平洋を進む機動艦隊も、なかなかの迫力です。スケール感を考慮してか、ほとんどのシーンで艦首方向から見ることになりますが、波を蹴立てて進む空母は最高に勇ましいです。「大型艦+荒れた海面」というジオラマのきっかけになるかも。

旗艦赤城からの夜明けの発艦はエセックス級『レキシントン』でのロケ。上空から艦を見下ろすシーンがあり、右舷側の大型艦橋や左舷に張り出したアングルドデッキなど「どー見ても『赤城』じゃない!」ポイントが丸見えです。このシーンだけは蛇足だったか。

連合艦隊司令部の置かれた戦艦『長門』も実物大セットによる再現です。福岡県芦屋町に『赤城』セットとともに建設され、後の『男たちの大和』セットと同様に観光客でにぎわったとか。

とにかく、模型モチベをぐいぐいと刺激してくれる恐ろしい映画です。

こんなモデラーさんにオススメ
・南雲機動艦隊、特に『赤城』
・連合艦隊旗艦『長門』
・やられメカとしての戦艦『ペンシルヴァニア』
・凶暴な九七艦攻
・地味だけど頑張った潜航艇『甲標的』

マニアックなところでは、日本風甲板塗装を施した空母『レキシントン』を作ってみるというのも面白いかも。ほとんど悪ふざけの域ですが。


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真珠湾攻撃70周年ということで、「モデルアート」「艦船模型スペシャル」「NAVY YARD」各誌競うように特集を組んでいます。さすがにいっぺんに揃えられないのでどれから買おうか思案中…
さらに来月23日には映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』が公開されます。
雑誌の記事で見る限りは史実を克明に描いた映画のよう。今年のクリスマスはこれだけが楽しみです

『レッド・オクトーバーを追え!』 [戦争映画]

『レッド・オクトーバーを追え!』
1990年公開 ジョン・マクティアナン監督
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冷戦末期、ソ連海軍の建造した最新鋭の原子力潜水艦「レッド・オクトーバー」が訓練のために出航。しかしショーン・コネリー演じる艦長は艦を手土産にアメリカへの亡命を企図していた。
「レッド・オクトーバー」は無音推進装置を備え、従来の索敵システムでの発見は全く不可能。大艦隊を出動させ追跡を図るソ連海軍。警戒を強める米海軍。両国の緊張の中、主人公のCIA分析官は艦長の意図を読みとり、接触を試みる。


潜水艦映画の古典といってもいいでしょう。
完全に「音」に頼った索敵、複雑な海底地形での秒単位の操艦、迫る魚雷、など「外が見えない」状況での戦闘という独特の緊迫感が全編にわたって味わえます。もう一歩踏み込んでほしかったのは、潜水艦という閉鎖空間における生活の異質さでしょうか。呉港の「てつのくじら館」で海上自衛隊の潜水艦を見学したときには、その狭さに驚きました。「レッド・オクトーバー」はタイフーン級の改良型という設定で、排水量32000t という超々大型潜水艦なのでそのあたりは事情が違うのかもしれませんが。。
トム・クランシー原作のハリウッド映画です。テンポのよさは抜群で、飽きることなくエンディングを迎えることになるかと思います。


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★★★☆☆
模型モチベ刺激指数は 3点(5点満点)

今まで全く食指が動かなかった「現代の潜水艦」というジャンルに挑戦してみたくなりました。
中でも本作の主役たるタイフーン級は水線長175m(阿賀野型軽巡とほぼ同じ)、排水量32000t(長門型戦艦に匹敵)のトンデモな巨艦で、作りごたえもありそうです。部品数は少ないので、映画を見た後にサクッと作れるかも?
劇中では追手役としてソ連のアルファ級、米国のロサンゼルス級も登場しますが、艦内のシーンがほとんどで艦影を見る機会は少ないです。むしろ主人公が乗ったヘリを発艦させる原子力空母『エンタープライズ』が見どころです。実艦ロケを行ったようで、ウェザリングやディテールの参考になるかと。

こんなモデラーさんにおすすめ
・タイフーン級原潜
・その他冷戦期の原潜
・空母『エンタープライズ』

原潜プラモといえば童友社が販売する HOBBY BOSS社製の1/700シリーズ(1000円出すとお釣りがくる)しか知りませんでしたが、DRAGON社からは1/350のタイフーン級も発売されているようですね。ただ漫然と作ったら、巨大な「ふ菓子」のようになってしまいそうな…ある意味難易度の高いキットです。
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