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『メンフィス・ベル』 [戦争映画]

『メンフィス・ベル』
1990年公開 マイケル・ケイトン=ジョーンズ監督
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英国に駐留する米第8空軍でのお話。
所属するB-17型爆撃機のうちの1機、通称「メンフィス・ベル」号は24回の出撃全て無傷で帰還していた。第8空軍では、25回の出撃を果たした機体の搭乗員は任期を終え帰国できることになっていた。部隊初の任期満了を目前に控え、周囲の注目も高まる。
最後の任務の目標は敵地ブレーメンの飛行機工場。「メンフィス・ベル」は任務を遂行し、無事帰国の途につくことができるのか…



実に爽やかな映画です。
物語の中心は「メンフィス・ベル」に乗り込む10名の搭乗員たち。個性的かつどこにでもいそうな青年たちで、決して英雄の美談ではないのがこの映画のいいところ。
また、音楽が非常に効果的です。作品の要所でアレンジされながら登場するアイルランド民謡、『ダニー・ボーイ』がぐっときます。一方で、敵戦闘機との空中戦や猛烈な対空砲火を浴びるシーンでは、BGMが全く使われていないのもいい。エンジン音、機銃発射音、罵声、悲鳴、これらの効果音は下手なBGMよりよっぽど恐ろしいです。

あと、完全なハッピーエンドなので安心して見られます。
「スパイスとして、これくらいの不幸はあるんだろうな…戦争映画だし」と心に保険をかけていましたが全くの杞憂で、むしろ肩透かしをくらった気分。戦争映画というよりも青春映画です。


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★★★★★
模型モチベ刺激指数は 5点(5点満点)

お見事。満点です
どれくらいかというと、エンドクレジットを聞きながら「メンフィス・ベル キット」で検索してしまうくらい。
とにかくB-17F(実機2機を撮影に使用)がかっこよすぎです。飛行場から次々に出撃するシーン、24機が合流し飛行機雲を引きながら編隊を組むシーンはゾクゾクきます。出撃準備から離陸、編隊飛行、対空戦闘、爆撃行、非常事態への対応、そして着陸まで、あらゆる手順がリアルに描かれているのもいい。
機体内部はもちろん外観を詳細にとらえたアングルも多く、ディティールやウェザリングの参考になるかと思います。むしろこの映画を観ずにB-17Fを作るなんてもったいない。ちなみにネットで検索すると、内部まで徹底的に作り込んでもはや飛行機というよりドールハウスと化しているモデラーさんもいるようです。
敵役としてメッサーシュミット(こちらも貴重な実機)が登場しますが、アングルが限られていたり動きが速すぎたりしてよく見えません。

こんなモデラーさんにおすすめ
・ボーイング B-17F
・メッサーシュミット Bf109

4発機は場所をとるし…と二の足を踏んでる方も、この映画を観たら気持ちが変わる。はず

『靖国 YASUKUNI』 [戦争映画]

戦争映画という表現はあてはまらないかもしれないですが


『靖国 YASUKUNI』
2007年公開 李纓 監督
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10年にわたり靖国神社に取材した日中合作ドキュメンタリー。
公開当時は「反靖国メッセージが込められている」「肖像権に関し登場人物の許可を得ていない」「政治的なテーマを扱う作品に助成金が支給されたのは問題」などさまざまな批判がなされ、いくつかの映画館では上映が取りやめになった作品です。


作品を構成する要素は主に3つ

1)靖国神社境内での取材
参拝者と、靖国神社に抗議する人々の様子。戦没者遺族、右翼団体、左翼団体、祖先の合祀を取り消すよう求める台湾人運動家、政治家、などなど。主に8月15日に撮影されたもの。

2)刀匠
靖国刀(かつて靖国神社境内で作られた軍刀)の最後の鍛冶職人である刈谷氏が、鋼塊を鍛錬し一振りの日本刀に仕上げるまで。

3)過去の映像・写真
戦前の参拝者の様子。昭和天皇による親拝も見られる。

これら3つが取り混ぜられ淡々と映画は進みます。



~全体的な感想~

政治的な偏向があるとは言えないけれど、ドキュメンタリーとしての正確さに欠ける。意図的なものか、調査不足によるミスかどうかは別として、誤解を招く部分が多くある。悪意はない…と信じたいが、あまりにも準備がお粗末。



刈谷氏という刀匠が日本刀を造るシーンや氏へのインタビューにかなり長い時間が割かれるが、中国人スタッフ(おそらく監督の李纓氏)との会話がチグハグ、というか成り立っていない。なんとか覚えた日本語と、90歳老人の高知弁とじゃかなりきつそう…。なぜせめて日本人スタッフをインタビュアーに充てなかったのか。
刈谷氏は過去に靖国刀の鍛造に関わったとはいえ、2007年現在は地元の高知県で黙々と日本刀を作っている1人の職人に過ぎない。しかし途中の挿入映像が「日本刀=軍国主義の象徴」というイメージを強烈に刷り込んでしまう。氏は多くを語らず、ただニコニコと笑っているばかり(こんなインタビューありか?という問題もある)なのだが、どうしても軍国主義や靖国神社への賛同者として見えてしまう。映画公開後に「当初聞いた撮影意図と違う」と刈谷氏が異議を申し立てたのも分かります。


戦時中の映像・写真も多く登場します。
ただこれらへの印象は見る人によってかなり違うのではないでしょうか。
正直言ってやや右寄りの自分にとって、靖国神社参拝の様子や昭和天皇への国民の歓迎は「古き良き日本人の純朴な姿」と見えましたが、人によっては「国家により価値観を歪められ、扇動される無知で哀れな姿」に見えるのかもしれません。戦時中の中国大陸での様子も、私にとっては「戦争の悲惨さ」を訴えるものでしたが、「日本民族の残虐性」の証拠としてとらえる人もいるでしょう。
この結論は出ないと思います。


知るツールとしてはイマイチですが、
考えるきっかけとしてはいい映画だと思います。
ぜひさまざまな資料や意見と合わせて見てほしい。



靖国神社境内での取材は見ごたえあります。
小泉首相の参拝を支持しながらも星条旗を持参したせいで追い出されるアメリカ人
靖国を批判したせいで君が代大合唱の中リンチされる日本人
台湾人の抗議をものすごく汚い罵声に翻訳して宮司に伝える日本人
などなど、ありとあらゆる人たちがエキサイトしています。




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★☆☆☆☆
模型モチベ刺激指数は 1点(5点満点)
あまり兵器は登場しませんので…

むしろ遊就館に行って零戦でも見るか!という気分になります。
実機を見ると意外に大きくて驚きますよ。

『原爆下のアメリカ』 [戦争映画]

模型作りのモチベ刺激に戦争映画をば。

『原爆下のアメリカ』(原題:INVASION, U.S.A.)
1952年公開 A.E.グリーン監督
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世界で初めて核戦争を描いた異色作!
とのたまうパッケージにつられて観賞。

邦題から「冷戦燃ゆ…」というシリアスな展開を期待していましたが、どうもこれは原題の「合衆国侵攻さる!」の方が似合うドンパチ映画。
1952年といえばサンフランシスコ講和条約が締結されたばかりの頃なので、冷戦の深刻さが足りないのは仕方ないのかもしれません。10年後の核攻撃は合衆国のピンチどころではなく、人類全体の危機になってしまうわけですが…。まあそんなことになるとはつゆ知らず、という映画。


~あらすじ~
アカの豚野郎どもがアラスカへやってきた! 空軍基地に惜しげもなく原爆を投下!
シアトルが空爆されたって? シスコが占領されてそれどこじゃないよ!
ダムは原爆で決壊だ! ダラスもセントルイスも原爆で壊滅だ!
いよいよニューヨークにもクソッタレ爆撃機が飛来! 摩天楼は一瞬で消滅だ!
落下傘部隊がワシントンに降下、議会もホワイトハウスも蛮族の手に!

…という忙しい73分。

たぶん、映画としての評価はかなり低いでしょう。
敵の某共産主義国がやたらと原爆を使いまくることや、素人目にもわかる演技のアレさ、特撮と呼んでいいのか悩むほどの微妙な特撮など、ツッコミどころは尽きません。映画の結論が「惜しまず国税を納めて米軍を増強しよう! 醜いアカの豚野郎を原爆で抹殺しよう! 戦時には積極的に献血しよう! 女性だって勤労奉仕! 男は当然皆兵制だ!」なので、もはやこれはプロパガンダ以外のなにものでもない。


しかしミリヲタさんにとってはなかなかの映画です。
太平洋戦争や朝鮮戦争で撮影されたと思われる記録映像がふんだんに(長さにして全編の半分程度は)収録されているからです。F-84GとMIG-15のドッグファイトや、炎上する空母、操車場に急接近する爆撃機の映像は迫力満点。航空隊出撃準備のシーンもなかなかしびれます。画質が悪くても、モノクロでも、本物の威力はすごい。
編集がムチャクチャなのは少し残念です。空母に迫る敵機がレシプロ機なのは仕方ないとして、米本土に原爆抱えて飛んでくる敵機役がB-29って! 原爆を使用した唯一の国としての何かのメッセージかとも最初は思いましたが、別にそんなこと考えてなさそうです。
また、セットシーンが中心の陸上戦は泣きたくなるほどの出来…


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★★★★☆
模型モチベ刺激指数は 4点(5点満点)
ストーリーがポンコツなぶん記録映像に集中できます。

特にこんな模型を作っているモデラーさんにおすすめです。
・MIG-15など戦後間もなくのジェット戦闘機
・エセックス級空母
・B-29、B-36などの戦略爆撃機
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